2026年(令和8年)7月1日から施行される経営事項審査(経審)の改正では、「担い手の確保」と「災害対応力の強化」を柱とした見直しが行われます。
新たな加点項目となる「建設技能者を大切にする企業の自主宣言(通称:職人いきいき宣言)」については、今のうちから内容を理解しておくことが重要です。
「職人いきいき宣言」の新設とCCUS配点の相殺
今回の改正で最も注意すべき点は、W点(その他社会性)における評価バランスの変化です。
加点項目(新設): 「建設技能者を大切にする企業の自主宣言」を行うことで5点加点されます。ただし、審査基準日が宣言日以降であり、宣言書と誓約書が提出されていることが条件となります。
減点要素(配点見直し): CCUS(建設キャリアアップシステム)の活用状況に関する配点が5点引き下げられます。
つまり、「宣言」をしないと、これまでCCUSで獲得していた点数がそのまま5点減ってしまうことになります。現状の経審ランクを維持するためには、この宣言は「やって当たり前」の必須項目になると考えられます。
「職人いきいき宣言」で取り組むべきこと
この制度は、技能者の処遇改善に取り組むことを自ら宣言し、その姿勢を「可視化」するものです。
必須項目: 労務費を内訳明示した見積書の作成や、適切な賃金支払、CCUSの利用環境整備など。
手続き: 審査基準日(決算日)までに、専用ポータルサイトから宣言を完了させておく必要があります。将来実施予定の内容でも宣言は可能ですが、宣言した取組開始日以降はしっかりと実態が伴っている必要があります。
災害対応力の強化:加点対象機械の拡大
地域防災を担う建設業者の努力を評価するため、W7(建設機械の保有状況)の対象機種が以下の通り拡大されます。
これまで9機種が対象でしたが、令和6年能登半島地震において活用実績が確認された以下の2機種が新たに追加されます。
不整地運搬車: 悪路での資材運搬に関する車両
アスファルト・フィニッシャ: 道路の舗装工事に関する車両
これらの機械を保有し、定期検査を受けて稼働できる状態であれば、W7項目においてさらなる加点が期待できます。
社会保険加入項目の整理
健康保険・厚生年金・雇用保険の加入状況(W1-1〜1-3)が審査項目から削除されます。これは「社会保険への加入」が建設業許可を受けるための必須条件(前提条件)となったためです。未加入でも良くなったわけではない点に注意してください。
施行までに「すべきこと」
改正が適用されるのは2026年(令和8年)7月1日以降の経審申請からです。スムーズに対応できるよう、以下の準備を進めておく必要があります。
①専用ポータルでの宣言完了 審査基準日(決算日)よりも前に宣言を完了させておく必要があります。「職人いきいき宣言」のポータルサイトを確認し、自社の立場(元請・下請・発注者)に合わせた宣言項目を選定しましょう。
②誓約内容の実践 宣言は将来実施予定の内容でも可能ですが、宣言日より1年以内に取組を開始しなければならず、実態が伴っている必要があります。労務費の適切な見積もりや、CCUSの利用環境が整っているか再点検してください。
③建設機械の書類整備 新しく対象となる「不整地運搬車」「アスファルト・フィニッシャ」を保有している場合、加点を受けるために必要な台帳や検査書類が揃っているか確認しましょう。
④施行タイミングの確認 自社の決算期と申請のタイミングによって、旧基準で受けるか新基準になるかが決まります。特に2026年7月前後に申請を予定している場合は、スケジュール管理が重要です。
宣言企業だけの「3つの特典」
点数以外にも、実務上のメリットが明確化されました。
①シンボルマークによるPR: 宣言企業は国土交通省のホームページで公表されるとともに専用のシンボルマークを使用でき、求人や名刺で「職人を大切にする企業」であることを証明できます。
②宣言企業との取引優先: 「取引先の選定にあたり、宣言を行っていることを考慮すること」が宣言の必須項目となっています。
③受注機会の拡大: 発注者向けの宣言項目もあり、官民問わず「適切な価格で発注する」文化が広がることが期待されます。
まとめ
今回の改正は、これまでコツコツと処遇改善やCCUS導入に取り組んできた企業が、しっかりとその努力を点数に反映できる仕組みになっています。施行直前に慌てないよう、早めの準備を心がけましょう。
📝 公式参照元
経営事項審査の主な改正事項(令和8年7月1日施行)– 国土交通省
「職人いきいき宣言」制度ガイドライン – 建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度事務局
建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度 ポータルサイト

