令和2年10月3日作成
令和2年10月1日施行の建設業法施行規則改正により、建設業許可取得の要件(人的要件=経営経験)が緩和されました。
【経営業務の管理責任者の要件緩和】
これにより従来建設業許可の取得が難しかった「若手経営者の建設業者」や「建設業の経歴の浅い法人」、「複数業種の建設業許可を希望する事業者」の建設業許可取得の可能性が広がるものと思われます。
「経営業務の管理責任者」の要件緩和のポイント
建設業許可取得のための要件の一つであった「経営業務の管理責任者(いわゆる経管)」は、従来、「許可を受けようとする建設業の業種に関し総合的に管理した経験」を持ち、かつ「その経験年数が5年以上もしくは6年以上有する常勤の者」を置く必要がありました。下記(表1)が旧の経営業務の管理責任者の考え方です。
(表1)
今回の改正により
①「建設業の業種に関し総合的に管理した経験」が申請しようとする許可業種に限る必要がなくなりました。
つまり、これまでは「建築一式工事」の許可を取得するためには、上記の表のいずれかに当てはまる必要がありました。
例えば、過去に役員として「建築一式工事」の経営業務管理経験が5年以上ある(表1①)、建築一式工事の経験はないが、その他の建設業種(内装やとび・土工等の専門工事)で過去に役員として経営業務管理経験が6年以上ある(表1④)という経験を持つ者が役員(又は事業者)でないと、「建築一式工事」の許可を取得することが出来ませんでした。
これが今後は、建設業の経営業務管理の経験について業種を問う事がなくなります。
つまり上記の表でいえば、「許可を受けようとする建設業の経営経験」⇒「建設業の経営経験」となるわけです。(表1の④⑤がなくなる)
②これまでは「経営業務管理責任者」=「その経験を有する個人」という考え方でしたが、改正により「組織として経営業務の管理を適正に行う能力」という考え方に変更されました。
これまでは、上記の(表1)に該当する個人が存在しない場合には建設業許可の取得ができませんでしたが、改正により(表1)に該当する個人がその事業者内にいない場合でも、下記に該当する場合には建設業許可の取得が可能となります。
※下記の表2のロ(1)、ロ(2)
(表2)
ロ(1)、ロ(2)は、一人の個人では経営業務管理責任者の要件(建設業の経営業務管理経験が5年)を満たさないが、建設業の役員等として2年以上の経験のある者がいれば、複数の者によりその者を補佐して「経営業務管理責任の能力」を担保する形と言えます。表2のロ(1)、ロ(2)で補佐する者は財務管理・労務管理・業務管理でそれぞれ別の者でも、同一の者でも可能です。ただし、建設業許可を申請する会社で5年以上それぞれの経験を有している必要があることに注意が必要です。
※なお、しばらくの間は、このロ(1)、ロ(2)で建設業許可申請を行う場合には、個別に許可官庁(各都道府県や国)と事前相談(社長、事業主の直接面談を含む場合あり)が必要なケースがありますので注意が必要です。
適切な社会保険への加入が許可条件になります
今回の規則改正により経営管理者の要件緩和が行われるのにあわせて、建設業許可の要件として、適切な社会保険への加入が必須となりました。
従来は、許可を受けようとする場合、その会社で加入義務が課される社会保険の内、健康保険、厚生年金保険、雇用保険のいずれかが未加入でも建設業許可の受付け及び許可処分がされてきました。(事後に加入の届提出で可となっていた。)
しかし、令和2年10月1日以後は、その会社で加入義務が課される社会保険(健康保険、厚生年金保険、雇用保険)については、すべて加入していないと許可申請の受付がなされなくなります。